紫苑


戻らない日々を幾つ数えて
戻れない日々を幾つ願って
踏みしめて踏みつけて
見上げた空は何時も蒼

風の通り道幾つ追いかけ
刻み込んだ時を止めても
幸福は砂上の楼閣
零れ落ちる時の砂

握った手を握り締めて
縋るように抱きしめて
祈るように何度願って
見送り続けるすり抜ける指

離れた路を哀れと紡いで
別れた道を切ないと嘆き
必死で握り続けた
静かに零れ落ちる砂時計



躊躇わないで
振り返らないで
行けば良い

断つ小指の約束
噛み締めた奥歯の力
握り締めた爪の痕

躊躇わないで
振り向かないで
行けば良い

飲み込む音の色
吐き出す吐息の弱さ
歪む視界と滲む貴方



今途切れてしまう
途絶えてしまう
響き渡れ
終末の鐘の音

月を飲み込む
星渡り鯨
太陽を塗りつぶす
海切り鴎

見回せ
見渡せ
見極め
見送れ
流雲の軌跡

空に出来た水溜り
零れ落ちる海
踏みつける霧
響き渡る終焉の轟音

今途絶えてしまう
途切れてしまう
かき鳴らせ
終末の鐘の音




貴方を想う。何時までも思う。
鳴り響く終末の鐘の音に、きっと誰も気付きはしないから。
聞かなかった事にして。
睦言のように繰り返す。戯言のように繰り返す、貴方を想う。何時までも想う。

2007.07.08