この声が聞える?
光も届かない暗い暗い
深い森の奥の奥
冷たい切り株に腰掛けて
小さなハミング
愛の歌

掌は空っぽ
靴は未だ新品
濃い緑が覆う空はいっそ夜
歌う声が聞える?
ここでもまだ声は響く?

秘密の眠れる森
深い深い最奥
優しいハミング
喩え聞えなくても
愛してる
私はここで歌い続けるから



あふれ出した言葉
音に乗せて囁け
寂しい音色と微笑んで
偽善だと笑っても
其れだっていいんじゃない

薄っぺらい言葉連ねて
優しい嘘を重ね
柔らかな日々と抱いて
傲慢だと嘆いても
其れだっていいんじゃない

貴方のためになきたかった
傲慢だってずっと止めてた
貴方のために歌いたかった
身の程知らずの願望ばかり
それでもいいんじゃない

哀しい言葉繋ぎ合わせ
綺麗な世界彩って
道化師の顔して笑いながら
叫び声に塩塗って
開いた傷口手を突っ込んで
嗚呼
其れでもいいんじゃない
其れだって良いんじゃない
偶にはさ

もう許してあげたって
良いんじゃない?
泣き虫で傲慢で嘘吐きな子供



歌え
扇持て
舞い踊れ
主のお帰りぞ
誰ぞ待て

さぁ
飲めや
歌えや
騒げや
永き哀しみの終わりぞ
誰ぞ舞い踊れ

さぁ
歌え
扇持て
舞い踊れ
夢の終焉ぞ
誰ぞ叫べ



いつか
貴方にあげたいもの
指折り数えて
投げ出した

いつか
貴方にあげたいもの
受け取ってくれる
貴方が出来るまで

祈るように
待ち続けた

いつか
貴方にあげたいもの
忘れないよう
刻み込んで

夢見るように
歌い続けた

いつか
貴方にあげたかった
貴方が私にくれた現在と
同じだけの未来を



穏やかな鼓動の子守唄
永遠と続く羊水の中
愛される夢を見る

揺り篭から切り離され
空気は鼓膜を震わせて
子守唄すら失われる

孤独の渦に放り出されて
泣きながら生まれ
嫌われる幻を見る

分け合ったぬくもりも
季節巡れば奪われて
愛されていた日々を織る

磨耗しては哀しみ
寂しがっては苦しんで
怒って憤り
傷つけては傷ついて

誰も泣いて生まれ
笑いながら生きて
死んでいく独りで



まだ、聞える?
この声がいつか潰えて消えてしまう頃、貴方は何処かで笑っているのでしょう。
私は此処で、まだ歌う。
聞えないと知りながら、其れでも歌う。
歌う唄がまだ有るから。―――いつかこの喉が潰えて、歌えなくなっても。

2007.11.17