さよならの代わりに


お帰りなさいを云う為に
行ってらっしゃいと送り続けた
愛してるを云う為に
寄り添って抱き締めてキスをする

繋いだ掌がいつか離れて
二人が一人に戻っても
私は変わらぬまま貴方を待つでしょう
星を繋いで巡り辿り着いて

貴方が貴方でなくなっても
お帰りなさいと云う為に
行ってらっしゃいと送るでしょう
さようならの言葉の変わりに




花を贈りましょう
川辺のほとり
白い花も黄色い花も赤い花も

一片一片零れる花弁に
忘れぬようにキスを送って
世界の果てへと辿り着いたら

貴方が廻る世界の何処かで
貴方が幸福で居てくれるよう
貴方が笑っていられるように

花を贈りましょう
声も手も届かない遠い此処から
さよならの代わりに




さよならの言葉の変わり
優しい嘘を吐き合って
明日も明後日も其の先も
一緒に笑おうと肩を寄せて繰り返した

花が咲く日を何度も詠んで
咲いた花の下巡り会おうと
何度も何度も何度も
もう訪れはしない春を歌って

いつもと変わらない明日を詠った
明日がもう此処に無い事を
貴方も私も誰もかもが
本当はちゃんと知っていたけれど




飲み込んださよならの代わりに
何でも無いと笑って
明日がまた訪れて
変わらずに居られるのだと
優しい嘘で教えて

離れた道が何処かで再び交わると
例え本当はそんな日が来ないとしても
大丈夫なのだと笑って
変わらないのだと答えて
明日はまた訪れて

私たちが見上げた未来が
ちゃんと此処に有るのだと
泣くよりも微笑んで
歌う様に囁き続けて
口にするのを戸惑うようなさよならの代わりに




さよなら、と手を振るのは何時も辛く。飲み込んだ言葉と涙の代わりに、訪れない未来を。
さよなら、の代わりに、またね、と笑う。
また、が、もう二度と訪れないのだとしても。そう知っていたとしても。

2008.06.22